ホスピタリティで


念願叶ってチームフェニックスの一員になり、ゲルトのチームメイトになった頃、
彼は既に天才の名をほしいままにする不敗のチャンピオンでトレードマークの長い金髪も今と同じだった。
ヨーロッパ初戦で現地入りした日、ホスピタリティで関係者が頭を寄せ合うように食事をとる中
奥のテーブルで独り食事をする彼を見つけた。
スチールとプラスチックの安いテーブルは全く似合わなかったけれど長年そうしているだけあって馴染んではいた。
「隣を使ってもいいかい?」確かそんなふうに声をかけたはずだ。
まるで、さえない学生が学校で一番の美人に声をかけたときみたいに周囲からは俺が振られる瞬間を
笑う準備をしながら待ち構えているような視線が集まった。
あの人は不思議そうにこっちを見て「かまわない」と一言だけ発した。
それがゲルトと2人でとった最初の食事になった。

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